Kanae's Book Journal Occasionally with Movies

読書感想文とときどき映画。

<The 65th Book>黄色い家

豪快で壮大なんだけれど、すべてが繊細。 ストーリーは読者を引き込む勢いが凄まじく、登場人物、特に主人公の感情は痛いほど伝わってくるのに、文体が優雅にすら感じられる。 久々に心打たれる小説を読みました。 「黄色い家」(中央公論新社)著:川上 未…

<The 64th Book>おつかれ、今日の私。

30を過ぎて、仕事もプライベートも色々と転機があったりして。 毎日の積み重ねは大したことはなくても、年ごと、月ごと、週ごとに何かしら自分の中で、ちょっとしたイベントはあったりするもの。 そのひとつひとつに一喜一憂したりしながら、日々を過ごして…

<The 63rd Book>世界と私のA to Z

どの世代の人間だから、が言い訳になるわけでも、とある世代生まれの人を一般化するのも、必ずしも良いわけでも正しいアプローチでもないかもしれない。 けれど、名前がつくこと、世代における傾向が見えることで、自分の抱える矛盾や葛藤が可視化されやすく…

<The 62nd Book>嘆きの美女

外見における美醜については、多くの人がパラドックスを抱えて生きているのでは、と思います。 自分のコンプレックスに、やけに向き合わされてしまいました。 「嘆きの美女」(朝日新聞出版)著:柚木 麻子 publications.asahi.com 主人公の池田耶居子はいわ…

<The 61st Book>きれいになりたい気がしてきた

私はまだ若いけれど、それでも歳をかさねて悩みや気になるところは変わってきていることを実感している。 こうして赤裸々に、自身の内外の想うところを語ってくれる人がいるのは、ありがたいことです。 「きれいになりたい気がしてきた」(光文社) 著:ジェ…

<The 60th Book>変半身

本作著者の描く世界観は毎度、圧巻です。 物語として読みやすく面白いのに、裏に描かれているメッセージが深淵。 「変半身」(筑摩書房)著:村田 沙耶香 www.chikumashobo.co.jp 「変半身(かわりみ)」と「満潮」の二作品から成る短編集。 「変半身」は少…

<The 59th Book>ぜんぶ運命だったんかい おじさん社会と女子の一生

著者は、女性サラリーマン。アラサーで同世代。 ツイッターでは追っていた笛美さん著書、ようやく読了しました。 「ぜんぶ運命だったんかい おじさん社会と女子の一生」(亜紀書房)著:笛美 www.akishobo.com 笛美さんは、おそらく30代半ばくらいの、大手広…

<The 58th Book> ひとまず上出来

立て続けですが、ジェーン・スーさんの短編エッセイ集。 「ていねいな自分観察オブセッション」なんじゃないかな。笑 「ひとまず上出来」(文藝春秋) 著:ジェーン・スー books.bunshun.jp CREAでの連載を主としたエッセイ集。 これまで読んできた作品の中…

<The 57th Book> 新しい出会いなんて期待できないんだから、誰かの恋観てリハビリするしかない 愛と教養のラブコメ映画講座

映画、ラブコメについての本、そしてジェーン・スーさんが著者。 こんなにも好きなものが揃っていいのだろうか、と思える夢の一作です。 (アラサーだし、正直まだちょっと出会いは期待したいけどね...笑) 「新しい出会いなんて期待できないんだから、誰か…

<The 56th Book> すべて真夜中の恋人たち

一応、恋愛小説だと思うけれど、一概にそれだけとも言い切れない。 まるで俳句のような、詩のような、それでもなんだかとても人間臭くて、 自分を自分に戻してくれるようなそんな作品です。 「すべて真夜中の恋人たち」(講談社文庫) 著:川上 未映子 bookc…

<The 55th Book> 夏物語

生まれてきたこと。生を授けるということ。性欲と生殖。 (女として)生を授けて生きていくこと、または授けずに生きていくこと。 生まれてきて、死んでいくこと。 「乳と卵」の続編ともいえる本作、life-changingな一作かもしれない。 必読です。 「夏物語…

<The 54th Book> 選んだ孤独はよい孤独

あー、いるよね、そういう男。 っていう感じの男性たちがメインの短編集。 女性の視点で読むと、「うわ、いるいる、こういうクズ男」ってなるけど、 ニュートラルに読むと、もし自分が男だったら、って読むと 結構しんどい。。。 「選んだ孤独はよい孤独」(…

<The 53rd Book> ほろよい読書

ほろ苦かったり、甘酸っぱかったり、お酒を飲める人たちの ちょっとした日常と青春が詰まった短編集です。 「ほろよい読書」(双葉文庫) 著:織守 きょうや・坂井 希久子・額賀 澪・原田 ひ香・柚木 麻子 www.futabasha.co.jp お酒が主役(?)の複数作家に…

<The 52.5th Book (番外編)> 痩せてる女以外生きてる価値ないと思ってた。

番外編です。珍しく漫画です。 「痩せてる女以外生きてる価値ないと思ってた。」 (ぶんか社)著:ざくざくろ www.bunkasha.co.jp SNSで見つけて、思わず衝動買いしてみたら、漫画でした。 私は過食嘔吐はなかったし、ADHDでもないけれど... でも人生で”やせ…

<The 52nd Book> モヤる言葉、ヤバイ人 自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」

ああ、私も人をモヤらせてしまったことある... 私もヤバイ人だったことあるかも... って、自身を省みるきっかけにめちゃくちゃなります。 「モヤる言葉、ヤバイ人 自尊心を削る人から心を守る『言葉葉の護身術』」 (大和書房)著:アルテイシア www.daiwash…

<The 51st Book> 一九八四年

私は本作についてはpretendしていません、お恥ずかしながら今更、 初めて読みました。 Books You Pretend You Have Readというコラム記事に必ず掲載されるといっても 過言ではない1949年に刊行されたという本作。 まるで現代社会を予見しているかのような末…

<The 50th Book> アウトサイダー

米国ホラー小説の巨匠、スティーヴン・キングの最新作です。 上下巻かつページ構成も上下段になっている、超大作です。 「アウトサイダー」上・下巻(文藝春秋) 著:スティーヴン・キング 訳:白石 朗 books.bunshun.jp books.bunshun.jp フリントシティと…

<The 49th Book> 地球星人

大好き♥!とはならない作品だけれど、友人知人の皆さんに是非とも 読んでみてほしい、そして感想を聞きたい本、ナンバー1かもしれません。 「地球星人」(新潮文庫)著:村田 沙耶香 www.shinchosha.co.jp 村田氏の作品は、「丸の内魔法少女ミラクリーナ」「…

<The 48th Book> 乳と卵

この世に生を受けて「生まれる」とは、どういうことでしょう。 「乳と卵」(文春文庫)著:川上 未映子 books.bunshun.jp ああ、日本文学読んでる、って読みながら実感してしまうような作品。 内容やストーリーは確かに、とても現代的だし、芥川賞受賞作な上…

<The 47th Book> ボージャングルを待ちながら

珍しくラブストーリーを読んでみました。 コミカルで軽いタッチなのに、何とも切ないフランスの愛の物語です。 「ボージャングルを待ちながら」(集英社) 著:オリヴィエ・ブルドー 訳:金子 ゆき子 www.bungei.shueisha.co.jp 息子の「ぼく」が語る、両親…

<The 46th Book> 踊る彼女のシルエット

30代女性が必ず悩みもだえ、葛藤するであろう自分の生き方についての数々の議題を、 ぎゅっと凝縮して、女性の爽快な友情の物語にしてくれています。 「踊る彼女のシルエット」(双葉文庫) 著:柚木 麻子 honto.jp またも柚木氏の作品。 「BUTTTER」「その…

<The 45th Book> 説教したがる男たち

男性が何かを話しているときに、どうしても一歩引いてしまう自分がいます。 主張が強い、と言われがちなこの私ですら。 私の発言には価値がない、と潜在的な無意識下で思っていることがあり、 私自身が、自分の考えや発言を軽視している事実に傷ついています…

<The 44th Book> Eyes that Kiss in the Corners

今回はちょっと番外編かもしれない、絵本です。 しばらく前にFoxy eyes が流行っていましたが、アジア人差別として波紋を呼んだり していましたね。 そんなアジア人の「目」に関する、大変可愛い素敵な作品です。 「Eyes that Kiss in the Corners」 (Harpe…

<The 43rd Book> さよなら、男社会

男性が築き上げてきた現社会は、「自分」というものを犠牲にし、蔑ろにされた 数々の「自分」の悲しすぎる集合体かもしれません。 私もそんな集合体である社会を形成する一員でありながら、被害者なのだと思うと、 涙ぐまずにはいられない。 前回紹介作もそ…

<The 42nd Book> 男らしさの終焉

現社会を生きる男性に向けて、有害な男性性をから解放されよう、と呼び掛けている 本書ですが、女性として、人間としても、自分を大切にしようと改めて振り返ることが でき、それがより良い社会に繋がるはずだという強いメッセージを感じる著作です。 「男ら…

<The 41st Book> 私たちにはことばが必要だ ~フェミニストは黙らない~

フェミニズムとは何か、勉強すればするほど、その上で人とコミュニケーションを 取れば取るほど、自身の内外に葛藤が生まれていました。 その息苦しさへの対処の仕方を教えてくれる教科書でした。 「私たちにはことばが必要だ ~フェミニストは黙らない~」(…

<The 40th Book> キングコング・セオリー

こんなにも爽快な読み味のフェミニズム著作はないでしょう。 レイプや売春などの実体験を元に、良くも悪くも飾り気ない、ちょっとぶっきらぼうで パンクな言葉で語られる、超絶アバンギャルドな本エッセイ。 現社会の波に乗れている人々には、耳障りなのかも…

<The 39th Book> 存在しない女たち ~男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く~

開眼とはこのこと。 世界が男性優位社会のであることのエビデンスと言っても過言ではないでしょう。 「客観的」とは?「常識」とは?「普遍」とは? 全てが男性の特性によってデザインされていたら、それらは文字通りのそれなのか。 「存在しない女たち ~男…

<The 38th Book> ナイルパーチの女子会

女友達がいたことのない女性同士が出会い、各人の抱える問題も相まって、 それぞれの人生の歯車が狂いかけていくお話。 自分らしい人間関係の構築とその維持について、改めて熟考してしまいました。 「ナイルパーチの女子会」(文春文庫)著:柚木 麻子 http…

<The 37th Book> JR上野駅公園口

なぜ世界的に評価されたのか、正直、個人的には全くわからない作品でした。 「JR上野駅公園口」(河出文庫)著:柳 美里 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309415086/ 平成天皇と同じ日に生まれた、福島県出身の出稼ぎ労働者、後に3.11震災により、 …