Kanae's Book Journal Occasionally with Movies

読書感想文とときどき映画。

<The 22nd Book> 丸の内魔法少女ミラクリーナ

表紙が可愛いのと題名から、多少メルヘンチックな本かと思っていたら、

全くセンセーショナルな本でした。

 

「丸の内魔法少女ラクリーナ」(角川書店

著:村田 沙耶香

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https://www.kadokawa.co.jp/product/321903000373/

 

芥川賞を受賞した「コンビニ人間」の作家さんの作品です。

コンビニ人間」はまだ読んでいませんが。

20.5番目の「Pen」にもフェミニズムに関連する作品として載っていた本作は、4作の

短編集でした。

この可愛らしい、わくわくする題名と表紙からは想像もできないほど、各作品、

現代の話のようではありますが、一歩先のあり得そうな未来を描いているかのような、

そう来たか!と読者の意表をつくようなものばかりでした。

せっかくですので、各作品のざっくりとしたあらすじを紹介します。

「丸の内魔法少女ラクリーナ」

小学生の頃、レイコと始めた魔法少女ごっこを、未だに密かに続けている35歳のリナ。

ラクリーナに変身すれば、残業や、日常の嫌な出来事も、笑顔でこなせる。

そんな設定で日常をやり過ごしている、妄想癖が甚だしいながらも現実的ともいえる

リナの家に、モラハラ彼氏から逃げ出してきたレイコがまた転がり込んでくる。

なぜかレイコのモラハラ彼氏と、リナは魔法少女ごっこをすることになるが、

果たして彼は、ホンモノの魔法少女になれるのか。。。

秘密の花園

小学校の初恋の相手、大学で再会した早川くんを、千佳は1週間の期限付きで、

早川くん合意の上で、家に監禁している。

それは、初恋を忘れるために、次の恋へ進むために、千佳にとって必要な儀式だった。

「無性教室」

その学校では「性別」が禁止されている。

胸をつぶすトランスシャツを着て、髪の長さも男女ともわからない長さの指定があり、

校内での主語は「僕」。名前も性別がわからないように、実名にちなんだ名前を登録

し、互いをそれで呼び合う。

中学では判別しにくかったセクシュアリティも、高校へ入るとわかるようになるが、

めったなことでは互いに教え合うことはないし、本当にどちらの性別かわからない

生徒もいる。

ヘテロセクシュアル女性と自認しているユート(本名:優子)も、性別不明のセナに

恋をし、校則故に葛藤し、もがいている。

「変容」

2年間、家庭の事情で社会から離れていた真琴は、社会復帰の手始めに、ファミレスで

アルバイトを始めた。

だが、そこで一緒に働いている大学生たちに「怒り」の感情がないことに気付き、

愕然とする。

たしかに今は、昔のように、カップルや夫婦でもセックスをしなくなった。

自分が大学生の頃は、セックス未経験の人数が8割を超えており、今も年配の人が

時々していると聞く程度である。

そのように「変容」してきた世の中だが、「怒り」がないとは何事か。

自分の夫にも「怒り」がなく、怒る自分に戸惑っている。

親友の純子には精神、魂のアップデートをしないといけない、と諭される。

感情とは、共感とは、精神とは。 

 

なんかそれぞれのお話で色々と思うことはあったのですが。

 

あー、私も魔法を使って、スーパーサラリーマンに変身できないかしら。

スーパーサラリーマンに変身したら、(ビジネス以外の)余計なことを考えずに

必殺仕事人!必殺社畜人!とかになれるんだろうな。

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私、かなえ、会社にいるときはスーパーサラリーマンに変身するの★

今日もお客さんからは無茶振りされて、上司からも珍しく少し叱られちゃったけど、

笑ってこなして、ちょっと反省して、すぐにまた目の前の仕事をこなしてきたわ!

残業?あの時間が甘美なのよね~

私、仕事してる!ってちょっと自分に酔っちゃうところもあるんだけどね、うふ。

おじさんたちは、ノリのいい私のことが結構お気に入りで、残業後は、大体飲み会に

誘われちゃうのよね、いつも「はい、喜んで!」って答えるの。

お陰様で食費が浮いちゃう!

あ、でも同年代や、ちょっと年上のお姉さま方とも仲良くしないと回る仕事が回らない

から、公私ともに色々な情報交換をするようにもしているの。

お友達、とはなかなかいかないけれど、女性の情報ネットワークは凄まじいのよね。

もちろん、後輩との交流も忘れないわ。

会社の方針、それに見合った社員のあるべき姿は教育しないといけないけれど、

後輩たちでも溜まることはあるものね。

気持ちはわかることもあるし、時々聞いてあげて、励ましてあげるの。

傾聴力、ってやつかしら!

その傾聴力のお陰で、お客さんからの信頼も得られて、評判も上々!

このまま行ったら、私も女性役員とかになっちゃうのかな...!!

おかげで今のところ、平日も休日も、あちこちから引っ張りだこ!

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あれ、平日も休日も引っ張りだこになっちゃったよ。笑

いや、なりたくないね、これwww

なんか、こうやって想像の世界で書くと、もう皮肉に厭味ったらしくしか書けない、

よくわからない、スーパーサラリーマンの世界ww

なれたら楽なんだろうな、とは思いますけどね。

自分を押し殺さないと、サラリーマンって楽にできないんですかね。

知らない間にみんな、自分を無にして、個を無にして、自分が無くなって、

それで良しとして生きているのかしら?

それとも元から、私と違って自我が強すぎないのかしら。

繊細でいることは、どうしてこう、生き辛いのでしょう。

 

初恋、いつでした?

私、たぶん二十代に入ってだと思います。

小中学生の時って、みんな好きな人がいる前提で話が進んだりするから、

私、あえて好きな人作っていたりしました。

あえて告白して、毎回フラれて、でも本当に好きでもないから、涙も出ないの。

でもフラれる度に、なぜか自分自身、何よりその女性性を否定される気はして、

無駄に傷ついて。

そんなことまでしてクラスやその当時の流れに乗ろうとして頑張っていたのに、

クラスでは浮いてしまうんですよ。

愚かで可愛かったな、昔の私は。笑 

今も愚かだけど、もう可愛くはないのです。

本作の千佳みたいに、内に秘めた熱く、自分色に染めた恋、私にはないなあ。

恋に恋する、って言いますけど、それって、恋(している自分)に恋しているって

ことですよね。

ネタバレになるのかもしれないけれど、千佳の場合は、本当に片恋の相手を好きに

なっていたのだけれど、その相手が自分の中でどんどん磨き上げられた架空の相手

のようになっていたんですよね、実在する人間なのに。

でも、気持ちはわかるなあ。

思い出は美化されるっていうけれど、自分が好きな人も美化されていきますよね。

レイコがモラハラ彼氏を美化して付き合い続けていたように。

恋は盲目っていうか、恋は幻想なんですねえ。

 

なんか最近、フェミニストとして考えたり、怒ったりすることが多かったので、

「無性教室」がセンセーショナルで感動したけど、感想書くのはやめておきます。

 でも読んでほしい。

 

本を読むと、(読んでなくても)常に自分と向き合うことになるのですが、

ちょっとここ数日は、それもお休みモード。

常々、根詰めて自分のことを考えてしまう性格だから、たまにお休みしないと、

やっぱり持ちませんね。

文章も書けないし思い浮かばないや。