Kanae's Book Journal Occasionally with Movies

読書感想文とときどき映画。

<The 44th Book> Eyes that Kiss in the Corners

今回はちょっと番外編かもしれない、絵本です。

しばらく前にFoxy eyes が流行っていましたが、アジア人差別として波紋を呼んだり

していましたね。

そんなアジア人の「目」に関する、大変可愛い素敵な作品です。

 

「Eyes that Kiss in the Corners

(Harper Collins Publishers

著:Joanna Ho  絵:Dung Ho

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Eyes That Kiss in the Cornerswww.harpercollins.com

 

絵本なので、ストーリーはとてもシンプル。

 

大きな碧眼、長くカールしたまつ毛の女の子も世の中にはいるけれど、

私の目は、温かいお茶のように優しい輝きで、はじっこでキスしているような目。

それは、大好きなママや、ナニー、妹と同じ目で、未来への希望に満ちた美しい目。

 

そんな、とてもHeart-warmingな、素敵な絵本です。

また絵が温かい色彩でカラフルに彩られていて、どのページもとても綺麗。

 

 

アジア人差別を受けたことはありますか。

この約2年半、私はマレーシアとバンコクという東南アジアに住んでいて、人種による

差別はあまり顕著に感じることはありません。

もちろん、マレーシアもタイも、多民族ですので、人種に基づく採用や出世の話は

聞くことはしばしばあり、大変嫌な気持ちになりました。

が、少なくとも、マジョリティがアジア人であるこのアジアの地で、アジア人差別を

受けた記憶はありません。

 

米国はシカゴ郊外に10カ月ほど現地の高校に留学をしていたことがありました。

人種としては、白人、黒人、ヒスパニックがメジャーで、アジア人は比較的少数。

時々、送り迎えをしてもらえない時や、スクールバスに間に合わないときは、

ウォーキングにちょうどいい距離で、家まで歩いて帰ることがありました。

明らかに同じ高校に通っているであろう高校生が何人か乗り合っている車から、

白人の男の子が窓を開けて、歩道をとぼとぼ歩いている私に向かって、

「Hey yellow monkey!!」「You whore!!!」などと叫ばれたことはありました。

後者は必ずしも人種の文脈はありませんが(むしろ男女差別)、当時の私は、

アジア人が少ない環境に物心ついた人生で初めて身を置いていたわけです。

最初の数カ月は、英語も全くわからず、日本語であれば色々と物事を理解できるのに

全てが英語であるだけで、自分が何もわからない乳幼児になったような、とんでもない

おバカさんになったような、自信を日々失くしている時期でした。

そんな中で、「yello monkey」は、自分がマイノリティであること、人間以下でしか

ないことを思い知らされ、とても傷つきました。

最初に通っていた学校は、結構に裕福なエリアの子供が通う高校で、周囲の町の

高校生からは、Snobが多いとの評判でしたから(笑)、叫んだ彼らは、イケイケの

新車ジープに乗って、世界を手中にした気分だったのでしょう。

単に車が無く、道を歩いて帰らないといけない私をバカにして、気分を更に高揚させた

だけだったかもしれない。

数カ月前までは、日本人だけの高校に通っていた私が、白人や黒人、ヒスパニックで

ほぼ構成されている場所に、自らを放り込んだ時の、その世界観の違いたるや。

何人か知り合ったアジア系の生徒も(韓国系、フィリピン系、中華系、スリランカ系)

いましたが、彼らは決してマジョリティではないことを自ら把握していたし、

確かに頭が良く勉強ができる子たちが多かったから、どちらかといえばGeekとして

分類されていて、決して人気者のグループではなかった。

気取り屋が多い高校生(つまりイケイケな人たち)、アジア人に比べて、心身の成長も

早熟で既にセクシーで大人な彼らに、日々圧倒されて、劣等感を募らせていた中での

顔も見えない相手が放った「YELLOW MONKEY」は、未だに忘れられない一言です。

 

 

数年後、大学生になっていた私は、メキシコにボランティアという名の海外旅行を

しに行きました。

日本も含むアジアやヨーロッパから、多くの学生が参加していました。

もうほぼ野グソに近いくらいの生活で、トラブル多発の過酷な日々でしたが、程よい

距離感でメンバーが互いを尊重しつつ、楽しく生活できた2週間だったと思います。

主催者サポーターのひとりに、イタリア人の女性がいました。

小柄なイタリア人女性で、こじんまりと顔も身体も綺麗にまとまっているように

私には見えました。

ボランティア生活をしていた山奥の田舎の小さな村から、町へ降りてきて、あと少しで

お別れというときに、みんなで談笑していたときのこと。

「(アジア人の数人に向かって)あなたたち、笑っているときは目が見えているの?

(ある女の子に向かって)あなたとか、笑うと目がなくなっちゃうじゃない!!

Kanaeは目が残っているか~。でも、それで見えているとか本当不思議!!」

と、目じりに指をあて、引き延ばしたジェスチャーをしながら言ってきたのです。

つい一瞬前まで笑っていた私の笑顔は、そのまま引きつり、凍り付きました。

なんと返答したかは、あまりのショックに覚えていません。

アジア人らしく、空気を壊さないように、「見えているよ~!笑」とでもヘラヘラ

返答したのでしょうね。

そんな発言を放った本人は、ただ単に、目の形や大きさの違いを事実として述べた

だけだろう、とその場では思うようにしました。

そうじゃないと、楽しかったけど、キツくてしんどかった2週間が、嫌な思い出に

なってしまうから。

だけど、やっぱり、どう思い返しても、このコメントは嘲笑でしかないと思うのです。

会話の文脈やコメント内容もそうですし、何より、昔から白人がアジア人を表すのに

してきたつり目のジェスチャー付きでありました。

長い人種差別の経緯からしても、仮に本人が「嘲笑したつもりはなかった」と言った

としても、結果としてはその意図は反映されないことを、認識していてほしかった。

真偽のほどはもう今となってはわかりませんが、思い返してみても、そのつもりは

あったような気がするし、アジア人としての誇りや尊厳を奪われる可能性がある生活を

多少なりともそれ以前にしていた私には、本当に傷つく言葉でした。

冒頭で少し書いた、少し前にSNSで話題になったFoxy Eyesについても、私と同じように

感じるアジア人が多かったからこそ、物議をかもしたのだと思います。

 

 

そんな経験をしているであろう、多くのアジア人を励ましてくれる本作品。

既に多人種の中で子育てしている人、これから世界に羽ばたくお子さんがいる家庭には

ぜひ置いておいてほしい一冊です。

もしくは、これまでアジア人差別で傷ついたことのある大人でも、過去の自分を

励ましてくれる作品です。

アジア人の私の目、素敵でしょう。