Kanae's Book Journal Occasionally with Movies

読書感想文とときどき映画。

<The 53rd Book> ほろよい読書

ほろ苦かったり、甘酸っぱかったり、お酒を飲める人たちの

ちょっとした日常と青春が詰まった短編集です。

 

「ほろよい読書双葉文庫

著:織守 きょうや・坂井 希久子・額賀 澪・原田 ひ香・柚木 麻子

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www.futabasha.co.jp

 

お酒が主役(?)の複数作家による短編集です。

お酒を使ったお菓子に託した、積年の友人への密かな想い。

四十路になって、果実酒と恋には、酸いも甘いもあると実感するとか。

実家の酒造の味をわからぬまま、敷かれたレールを走りかける大学生の青春。

食事やお酒のたしなみ方が違いすぎた夫に出ていかれて、居酒屋兼定食屋でバイト。

保育園クラスのパパママ友相手にオンライン飲み会のバーテンしたり。

そんなお酒にまつわるお話が、5つ収録されています。

 

 

本ブログにも多数作品出ている、柚木麻子氏が私の最近のお気に入りで、

柚木氏の名前が表紙にあったから手に取った作品ですが。

柚木氏の、保育園クラス仲間のオンライン飲み会とバーテンダーのお話は、

お話自体でいえば、私自身が出産も育児も経験していないから、あまり

個人的に響くものではなかったのだけど...

でも、さすが!!って思える設定と、柚木氏の強い意志と主張が、

最後の5ページくらいに凝縮されている感じで、にんまりしてしまった。笑

コロナ禍の話だから、本当に最近、執筆されたものなのでしょう。

今の情勢への、親、子ども、子どもや老齢者のケアが職業の人々、

そんな人たちの切実な想いが、政治へ社会へぶつけられていて、

最初は、「え?冷蔵庫にあるもので作るカクテルのレシピ系作品?」と

思いきや、最後にぶわーっと、社会問題にメス入れるの、さすがすぎる。笑

 

 

個人的には、本書では原田ひ香氏の作品が好きだったかな。

厳選した調味料で作ったお料理の食後に、美味しいお酒を少し楽しみたい沙也加。

ご飯を食べながら、だらだらとお酒を飲んで、仕事のストレスを癒したい夫。

好みの食べ方、飲み方のすれ違いで、夫は出て行ってしまった。

出ていく前に、夫が密かに通っていた「雑」という小汚い定食屋・居酒屋で、

沙也加はバイトを始めることになる。

沙也加の頑なで、精神的にも成熟していない感じが、作品として魅力的。

あまり私は好きになれない主人公なのだけど、意外と、何も面白く感じない

主人公とかよりは、好感持てない主人公のほうが、作品としては面白いと

感じたりするのかも。

 

 

お酒にまつわる思い出、色々と思い返されてしまいますが、

楽しいお酒の思い出って意外とないものですね。笑

いや、楽しい会はたくさんあったはずなのに、思い浮かんでこない。笑

幼い頃は、基本的に、家族親族の酒癖で嫌な思いをすることが非常に多かった。

酒癖が良くない人が、家族にいると、結構トラウマです。

電車の中での酔っ払い(特に吐きそうな人)察知能力が異様に高くなって、

逆に嫌なものが目に入ることも増えるし。

仕事を始めると、「ああ、あれ嫌な酒の席だったな~」というのはいくらか

思い出されたり...

嫌な会社の酒の席で、ほとんど飲んでないのに悪酔いして、帰り道に足首骨折とか。

労災おりないよ~みたいな。笑

 

 

思い入れのある(?)お酒は、

赤ワインの「Zinfandel」もしくは「Primitivo」

ヤシの実酒「Toddy」

ジンの「MONKEY 47」

です。

 

 

「Zinfandel」は米カリフォルニア産、「Primitivo」はイタリア産、

ぶどうの品種自体は一緒らしい。

なんの会で、誰がいたかもしっかり覚えてはいないのだけど、

会社の人たちとイタリアンのお店に飲みに行ったときに、勧められて、

とても美味しくて、仲良くしてくれていた人と一緒に感激した品種。

今も、ご飯を食べに行くと、ワインリストで探してしまう。

やっぱり当たり外れあるから、必ずしもこの品種を買えば美味しいわけでは

ないこともわかったし、全くワイン詳しくないけど、ひとつだけ、

お気に入りとして覚えているもの。

赤ワイン自体は、軽いものより、重厚なほうが美味しいと感じる。

唇に滓が翌日まで残っちゃうようなやつ。

 

 

「Toddy」は、マレーシアで、会社のインド系のおじさんたちに教えてもらった。

Palm Wineとも言うらしいけど、その中の種類のひとつなのかな。

超ローカルすぎて、自分だけじゃ行けない遠いところにあった店。

二回くらい連れて行ってもらったかしら。

ヤシの実の花の液を発酵させて作っているとか。

新鮮なうちじゃないと、酸味が増すから、お店で土瓶から飲まないと

美味しくない、とか言っていました。

甘酒とカルピスを足して二で割ったような、甘酸っぱい味。

私は好きだったけど、人によって好き嫌いはあるようです。

飲みやすいから、グイグイ飲んで、結構酔っぱらった記憶はあります。

経験として、珍しいものを飲めた感じ。

 

 

「MONKEY 47」は仕事で知ってから、飲んでみたくて、でも当時、意外と

置いてあるお店が少なくて、ようやく見つけて飲んだら、ハーブ感満載で、

とても美味しくて気に入ったのでした。

ホテルのバーには絶対ある感じのようです。

大人になって、初めて入れたボトルが、このジンだったから、感慨深くはある。

それもマレーシアのBanyan Tree HotelのルーフトップバーVertigoで。笑

KLで一番ホットなルーフトップバーが、Vertigoだったから、誰かが

日本や他国から来る度に、行っていました。

その度に、このジントニックを頼んでいたら、知らぬ間に、給仕のお兄さんに

顔を覚えられていたようで、「ボトル入れたほうが安いよ!」と言われるがまま

入れてしまった。笑

会社の先輩たちと一緒に行ったとき飲み干しちゃって、追加で私の名前で

入れてくれたりもして、優しかったな。

我ながら、豪勢でバブリーなことをしているな、と思ったけれど、

これはお酒にまつわるいい思い出です。

 

 

さて、大して内容もなければ、とりとめもない感想になってしまった。

バンコクのバーホッピング、いつできるようになるかなぁ、とか思いながら

読んでいました。

けど、そんな感じで、心をほぐしてくれる一冊になっています。

せっかくだから、お気に入りのお酒と読めばよかったかもしれない。

張り詰めた一日を過ごした後に、一杯と一話、いかがでしょうか。