Kanae's Book Journal Occasionally with Movies

読書感想文とときどき映画。

<The 58th Book> ひとまず上出来

立て続けですが、ジェーン・スーさんの短編エッセイ集。

「ていねいな自分観察オブセッション」なんじゃないかな。笑

 

「ひとまず上出来文藝春秋

著:ジェーン・スー

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books.bunshun.jp

 

CREAでの連載を主としたエッセイ集。

これまで読んできた作品の中でも、一遍が短くて、読みやすいものに

なっていました。

「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」が、初めて私が手に取った

彼女の著作でした。

それ以降、雑誌の連載や、ネット記事など、すべてを追うことは

できていないけれど、書籍が出版されると必ず入手し、読んでいます。

そのくらい、「貴様~問題」は当時の私に響いたし、その後も

エッセイだけではなく、対談集なども含めて、毎度、励ましてくれたり、

共感してくれたり、必ず何かしらのポジティブな気付きを与えてくれる

彼女の文章は、大好きです。

このブックレビューでも「これでもいいのだ」で、女友達について

私も書いた気がします。

 

彼女はラジオなどでも活躍されていて、TBSアナウンサー堀井美香さんと

一緒にされているポッドキャスト番組の「Over The Sun」は毎週

聞いていたりするのですが。

意外と私と年齢が離れているのだな、と聞いていて感じることも多く、

その分、色々と学んだり憧れたり。

それもあってなのか、本作は、中年を謳歌している作者の日常と思索が

語られているので、アラサーの私には、共感よりは学びが多い。

早く年取りたいなあ、とまで思ってしまうこともあれば、あと

十数年後も未だ些末なことに悩むこともそりゃあるのか、とちょっと

落胆したり。笑

 

 

ジェーン・スーさんは、推察するに、非常にキャリアマインド、

というかwork-orientedな方なのだと思います。

本作の中に「頑張れたっていいじゃない」という一遍があるのですが、

頑張れることがたしなまれるような風潮になってきたことに、

モヤついていたという話です。

彼女は、頑張りたい人。

でも頑張りたい人が頑張っているだけで、勝手にoffensiveに捉えられて

しまう世の中になってきているよね、頑張れない人が頑張らなくていいよ、

というトレンドになっていると同時に、頑張りたい人が頑張っていい

雰囲気にもなってほしいよね、という話でした。

私は、work-orientedから真逆の人間なので、自分が頑張りたいレベルと、

周囲が私にここまでは頑張ってほしいと思っているレベルの差が大きく、

いまそれが非常に悩みで、ストレスです。

「(最低限のことはやるから)私は頑張らない、頑張りたくない」と

主張し続けているのに、周囲に諦めてもらえないことが、本当、

サラリーマンは辛いよ、な感じなんだけど。笑

 

昔から努力コンプレックスです。

それなりにガリ勉で過ごした中学時代、高校受験に失敗して以降、

鶏頭牛尾が私のモットーでした。

選んだ高校も、大学も(大学は私らしくて居心地よかった)、

選んだ会社も、ぜんぶ、昔ガリ勉したときほど、頑張らなくて済むと

思えた場所を選んだのです。

あれだけ努力したのに、結果が出なかった高校受験を、未だに私は

引きずっています。

努力して結果が出ないなら、(他人に迷惑をかけない範囲で)努力せずとも

出せる結果で満足したい、という選択をするようにしてきました。

努力が苦手だと、未だに思っています。

どうしても、努力が”必ず”成功につながるはずだ、という迷信を信じたくなる。

でも身を以てそうではないことを知っているので、努力しないという

選択をしてきています。

 

そこが今、特に仕事関係において、自らの精神状態に歪んだ緊張感を

生んでしまっていることになっています。

そして、結局そういったストレスから逃れるために、多くの人と会い、

酒を遅くまで飲み、一時的に忘却しようと試みる生活を最近は送っている。

あまり心身ともに健康的ではないのはわかっているのだけれど。

そうでもしていないと、ひとりバスタブで泣き止めなくなっちゃったりするから。

頑張らなくてもいいよ。というか既に充分頑張っているよ。

頑張っていても頑張っていなくても、それがあなただよ。

そんな言葉を自分で自分にかけても、まやかしにしか聞こえない、

そのくらいセルフコンパッションが今はうまくできていないんですね。

自尊心は下がっていくばかり。

自分一人でいると、ネガティブ思考の波に攫われそうになるので、

結局、人と酒を飲んで思考逃避をしているのですよね。

あえて感覚と思考を鈍麻させている状態なのかもしれません。

なんだかただの愚痴で暗くなってしまったけれど、今はこれはこれで

いいと思っています。

たぶん、そういう時期なのだ、と。

元から心身ともに体力も対人力も強くないから、いつまでも連日飲み会続きの

生活が続けられるとは思っていません。

私の逃避に付き合ってくれている友人知人の皆様には感謝しつつ、

潮時かな、と思える時がきたら、頻度を減らして、また別のストレス発散の

方法模索と、self-esteemに取り組むことにします。

 

 

今はそんな生活だから、本当はもっと心に響いたであろうはずの本作が

そんなに入ってこなかったのが残念です。

本作にも、「ていねいな暮らしオブセッション2021」という章があり、

流行りのいかにもな”ていねいな暮らし”はピンとこないけど...という

話なのですが。

”ていねいな暮らし”はジェーン・スーさん向きではないのかもしれないけど、

でも、やはり本作を読んで思ったのは、お仕事柄もあるのだろうが、

ていねいに自分のことを観察しているなぁ、と。

メタ認知能力が素晴らしく発達しているんだな、と。

それは本人の努力の結晶でもあるだろうし、だからこそ、それも

仕事のスキルの一つとして活かせているのでしょう。

広範囲にアンテナを張りながらも、自分のinstinctに従って、

日々の生活の中からトピックを拾い上げられているのもまた素晴らしい。

私もまた、日々のちょっとした会話や、街の風景など、小さな出来事から

気づきが生まれてくるような生活に戻ったら、また本作、再読したいです。