Kanae's Book Journal Occasionally with Movies

読書感想文とときどき映画。

<The 10th Book> 出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

東南アジアもいよいよ鎖国のようになって参りました。

なんだか行動が制限されるって、モヤつくし、気が滅入りますね。

 

「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」

河出文庫)著:花田 菜々子

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http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309417318/

いま写真をアップして気付いた。

掃除していな絨毯の上で撮ったこの写真に、私の抜け毛が写っていること。

知らんぷりしてください。

 

出会い系アプリ、使ったことありますか?

私は使っています。言うなれば、多用しています。海外生活、私は寂しいからね。

背に腹は返られません。飲み友達欲しいんだよ、マジで。

女友達はアプリ以外でもできていくのですが、男友達ってできないんですよね。

男女で分けるのもおかしな話かもしれないけれど。

性別って枠で切り取ると、圧倒的に女性の友達が多くて、そこにバリエーションを

求めると男性とか中間とかその他のお友達は今ほとんどいません。

日本で気軽に誘えていた会社の先輩や、学生時代の男友達。

生活の場所が一緒だと、下手したら女友達よりもしょっちゅう飲みに行ったりして

いたのに、こうして暮らす場所が離れると、連絡すら取らなくなるドライな関係。

人間関係、意外とウェットになりがち(仲良くしたい人に限る)な私は、ちょっと

それが寂しかったりもするんだけれど、でもそのくらいの距離感がまた心地よかった。

女友達は結構すぐできるのですが、男友達、なかなか難しいんですよね。

私の周りの女友達には、あまり男友達がいないのかな?

まあ男友達からパートナーに発展するのは理想ですが、別にそこまでは求めていない。

私は「今日はどこか美味しいもの食べに行きたいな」「今日は酒じゃ」という日に

「今から一杯サクッとどう?」というのを気軽にやれる人が男女問わず欲しいのだ。

そんなときに便利なもののひとつがマッチングアプリであるのは間違いありません。

10年?も経っていないか?前にその存在が出始めたときは、「出会い系」の言葉の持つ

イメージにびくついていましたが、自分でリスクをわかって線引きさえできていれば、

大変便利なツールだと思っています。

出会いって、自分で動かないとないから。

それを助けてくれるのにはもってこいだと思うし、こうして他人と(どんな形であるか

は人それぞれだが)繋がろう、人間関係を築こうという人がこんなにも世の中に、

世界にいるのがわかることは、素敵なことだと思えます。

 

今回は、そんな出会い系サイトを利用して、自分を見直し、自分の生活を公私ともに

一変させた、花田菜々子さんの実話に基づいたお話です。

彼女が実際に出会った人々の名前とかは変えられているのでしょうが、エピソードは

おそらくほぼほぼ彼女が体験したことなのではないか、と思われます。たぶん。

最初、この本を見たとき、手に取るか迷いました。

だってさ、私自身の経験談からして、出会い系アプリで連絡取ってくる男の人たちは、

だいたい一にセックス、二にセックスが多いんですよ。わかりやすい。

海外だからってのもあるのかもしれないし、外国人にその傾向が多く見られるような

気がするけれど。別にそれが悪いことではなく。

むしろはっきりしていてわかりやすいからいいのだけれど。

だから、飲み友達になるって私の目標のハードルって意外と高くて。

マッチする。(そもそもマッチするか?)

アプリ上メッセージ交換する。(そもそもメッセージ来るか?するか?)

アプリ上メッセージ続く。(途中で面倒になったり、嫌になることが多い。)

お互いの個人の連絡先を交換する。(教えないかも。教えてくれないかも。)

個人の連絡先で連絡を取り始める。(途中で面倒になったり、嫌になることが多い。)

直接会う約束をする。(予定が合わず先にの予定になると、もう面倒で嫌になる。)

会う場所を決める。(店待ち合わせだと、その選択次第では、それも嫌になる。)

当日集合場所へ向かう。(相手が来ないかも、会った瞬間嫌われるかもと不安になる)

飲み食いする。(楽しいことと楽しくないこと半々。)

会計する。(払ってくれること多々。有難いが、後腐れなくしたい場合もある。)

とりあえず解散。(本当に楽しければ二次会。翌日の予定次第では解散)

お礼の連絡する。(だいたい二回目以降はあまりない。)

もうね、工程が多すぎる。

この工程を経て、会って話しても楽しくないことも多かったり、楽しくてもただの

出張者だったり、気軽な飲み友達を求めれば求めるほど得られない遣る瀬無さを

感じている最近だったのです。

そんなときに、この本の表紙を見て、そんなうまい楽しい話あるはずないだろ!と

思って、ちょっと本と作者に嫉妬したんです。

で、手に取った本は棚に戻して、一旦店を出た。

手持無沙汰になって、また本屋に戻って、もう一度手に取ってしまったんです。

本を他人に勧めた話なら、その勧めた本一覧くらい巻末にあるだろう、

見てやろうじゃないか、と覗いてみたら、あら。

気になっていた作家さんやら、作品が挙がっていて、しかもこの本を読んだ人に

薦めたい本まで書いてあるじゃないか。

私も読書感想文ブログなんて始めるくらいには、本を読むし、好きだと思っています。

そのまま私の手により、本書はレジへと運ばれて行きました。

 

この花田菜々子さんも、70人とあるだけに、たくさんの個性的な人に出会います。

好きで堪らなく入社したヴィレッジバンガードの店長を務めていたけれど、

会社の方向性と自分のキャリアの志向とのジレンマや、別居している旦那との

煮え切らない関係など、公私色々な問題を抱えつつ、とある出会い系サイトに出会い、

自分にできる、本を紹介するという方法で、色々な人と出会い、会話をしていきます。

中にはいるんです。おかしな人も、それは。(感覚が合わないという言い方のほうが

より適切なのだろうか。でも明らかにマナーが無い人もいるんですよね。)

だけど、彼女はその出会いのひとつひとつを楽しみ、内省し、まるで都度新しい

自分との出会いがあるかのように描かれているように思えました。

 

何より素敵なのは、彼女が毎回、その時にたった30分しか話さない相手でも、

ちゃんと相手の人柄や趣味嗜好を考えて、真剣にその人と向き合って、本を紹介

していること。

本自体にも向き合わないとできないし、その相手のこともきちんと見ないとできない。

彼女はそこにやりがいを見出し、自分なりのアプローチ方法を考え、キャリアに繋げて

いくわけです。

好きこそものの上手なれ、なのかな。

私も、ちょっと本紹介みたいなこのブログやっているけど、他人目線の彼女と

ただの独白の私とは全然違うな。笑

 

私、就職活動の時、B to Bの会社しか受けなかったんですよ。

なんでそんなにそこにこだわっていたのか、今となってはわからないです。

ただ、自分にはB to Cなんて向いていない、って思っていたんでしょうね、当時は。

理不尽なことに異様に耐性が無いから(これは未だにそうですが)、B to Bのほうが

まだそういうことが少ないだろう、とか思っていたんでしょうね。

元から仕事として彼女は本を紹介したりもしていたのですが、彼女はプライベートで

始めた数々の出会いから、少しずつ自分のキャリアにも向き合って、自分の本当に

好きなことをキャリアとする道を切り拓いていきました。

私のキャリア選択は、(人生の選択の殆どが、というほうが正しいかもしれません)

消去法できました。

とても省エネなんですよ、消去法。

それもひとつの方法ですから、悪いことでも、いけないことでもありませんし、

時にツールとしては絶対に持っておきたい方法だとも思っています。

でも、それはほかの方法のやり方を知っていればね。

大学で法学部に進んだのも、就職につぶしが利くからでした。

文学部へ行きたかったのですが、学費を払ってくれる両親に盾をついてまでの

気持ちはなかったので、なんとなく法学部にいきました。

今となっては、なんであのとき実学なんて選んだのだろうと思います。

せっかく純粋に自分の好きなことを勉強できる機会であったのに。

自分の好きなことに向き合わなかったからでしょう。

就職活動も、活動期間を限りなく短くするという目標が一番で、就職活動がスタートし

2カ月程度で内定を早々にくれた会社に就職をしました。

サラリーマンって、どの会社も、少なくとも最初は(会社によってはずっと)歯車

なんですよね。

いい歯車になるためには、自分の感情を捨てるのが、会社にとっても、自分にとっても

いいんです。

会社にとっては使いやすいし、自分にとっても疲弊しないで済むから。

また省エネで済ませたい私は、最初は苦労しつつも、そちらに調整していきました。

でも段々と、その省エネにも限界がくるのかもしれません。

歪が出てくるものですね。

こうして、私も自分が好きなこと、自分にできることを、お金にならなくても

やっているわけです。

仕事でパソコンを付けないといけないときのモチベーションと、今これを書くために

パソコンの電源を入れるときのモチベーションははるかに違います。

また、映画「You've Got Mail」の一節になってしまいますが。

キャリアを負われたメグ・ライアンが、

「What is so wrong with being personal, anyway?」ってキャリアを負わせた

トム・ハンクスに問うシーンがあるんです。

キャリアがpersonalじゃいけない理由なんてないんですよね。

もっとpersonalになれる、personalであれるキャリア、あるんじゃないかな、

技術が発達すればそれこそそういう人、キャリアが目指されるんじゃないかな、と

ふと思ってしまうのです。

最近、personalになりがちなサラリーマンの私は、あまり上手にサラリーマンが

できていません。

 

今回の本もそうですし、「You've Got Mail」もそうですけど、私は本自体や

書店などが作品のメインとなっているものが好きなようです。

やっぱり本が好きなんだな、私は。